第196号

 


気になる言葉

四月二十三日、目覚まし代わりのラジオがペルーの人質事件の討ち入りを中継している。急いでテレビに向かう。まだ屋根から銃を撃っていた。五分ほどで鬨の声。後は大統領は全てを取り仕切る。人質が解放された。

百二十六日の人質監禁中に、いくつかの気になる言葉があった。今回は、そのうち「容疑者」と「対話」の二つを考えてみたい。

まずは、「容疑者」。テレビ、ラジオでは、

犯人たちを「容疑者」と呼んでいた。しかし、彼らの行動は各国のメディアによって世界の人々に中継さ。つまり、テロ集団が事件を起こしたのは全世界のすべての人間が認める事実である。「容疑者」とは容疑をかけられた者で犯人とは断定されていない者である。彼らに対しなぜ、「容疑者」と使うのか理由が分からない。法律家は法的手続きを踏まれない以上、目の前で犯罪が行われていても被疑者とする。それもよかろうがこの場合は曖昧な言葉であることは否めない。

「対話」はという言葉は、四月に入って使われなくなった。これが以下を物語る。あらためて辞書を引くと「相対して話し合う」とある。だが、私が「対話」というときはソクラテスやプラトンのギリシャ風の「対話」の意味に考える。

「君、テロというのはなにかね」「はい暴力をもって相手を屈服させるものです」「では戦争とどうちがう」「戦争は国と国が宣戦布告をして正々堂々とやるものですが、テロはいつ、どこでと決まっていないから、始末がおえません」「でも、テロはいつも何か、正しいようなことをいっておるではないか」「テロリストはその主張が正しいようでも、自分らがやっていることは人殺し、脅迫、強盗他の犯罪行為です」「ではそれはまっとうな人間がやることかね」「卑怯もののやることです」「卑怯者の犯罪者がこの世でのさばるのはおかしいではないか」「そのとおり、絶対に許されません」と。

この二人の会話は、先生と生徒の会話のようだ。つまり、本来の意味の「対話(テアローグ)」とは、教育法であり、テロという概念を導きだしていく帰納法的な手法である。

最初に、行政で 「対話」という言葉を使ったのは美濃部東京都知事であった。彼は教育者だから、これを充分ご承知のはず。都民相手に対話するとは教育することを意味したのではないか。それ以来、行政が「対話」という言葉を使っていると私はその奥に本来の意味があると思っている。もし、それを知らずに使っている行政マンやジャーナリストがいるならそれは無能のレッテルを貼る。

ペルー事件も四月初めまでは「対話」といった。「対話」だと相手を教育または説得する立場にある。テロがいくら叫ぼうとも彼らの命はペルー政府が握っていた。人質に手をかけるどころか、医師の診療を一週間に一度と言っただけで、命を失った。


何でもありのチベット行

ギャンチェから同じ道を返してチベット第二の町シガッチェへ、そこはパンチェンラマの寺タシルンポ寺の城下町である。

ダライ・ラマ五世が師のためにおくったのがパンチェン・ラマだが反ダライ・ラマの動きに利用されやすく後世に禍根を残した。現にパンチェン・ラマ七世が一九八九年遷化後、ごく最近転生者が発見された。が、ダライ・ラマと中国政府の両方が別人を認定している。今、タシルンポ寺には中国認定の幼い子供の写真がパンチェン・ラマ十世(数え方に二通りある)として飾られている。これをはじめとして他の寺院と雰囲気が違う。僧侶はチベット衣にそろいのチベット靴(他の寺ではバラバラだが)他の寺では経典で勉強するが、ここでは若年の修行僧達がチベット文字のコピーを勉強している。各堂宇きれいに改修され、中国要人の扁額もある。各お堂の写真撮影料が他寺はだいたい一部屋十元(百二十円)に対し百元ととてつもない値段である。今まではお賽銭と思って払ってきたのだが、ここでは写真はおろかお賽銭も払う気がしなくなった。とうとうガイドに通訳させて「写真代が高いばかりに皆んなお賽銭も投げないではないか、全体としては大きい損失だ」「上がきめたことだ」「上はバカだ、ここへ連れてこい」「上といっても中国のトップだ」「それもまた大バカだ」とジェスチャーをまじえていうと青年僧たちはみんな悦んでいる。

中国政府はダライ・ラマ十四遷化後に備え、幼きパンチェン・ラマを中心にチベットを支配しようとしてるのではあるまいか。これを踏まえダライ・ラマ十四世の「私が最後のダライ・ラマかも知れない」とは含蓄ある言葉だ。町では品数も多いし、カラオケ等々開放感があふれているものの、我々がホテルの前の土産物屋で居ると若い警官がやってきた。「おまえはポリスか」「そうだ」しばらくして何もいわずに出ていったが、私どもを危険から守ってくれたことにしておこう。


余録

今年の石楠花は若老木、和洋と格別であった。この時期山吹の黄色い花もまた格別だ。おわって朴の花が咲く、ここ三年ほど毎年咲いているので今年は大丈夫かな。鶯の声に続いて、十六、七日頃にはホトトギスがきてお山は深緑に包まれて初夏の装いとなる。 @

バス便 第一・第三日曜日 アミコ前9:30発@

問い合わせ:市バス観光課 0886-52-2133@

七月十日(木)

一日お詣りすると四万八千日の功徳が
あると言われる最大のご縁日です。 @

発  行  所

発行責任者 山田戒乘

新四国まんだら霊場第81番札所

中津峰山如意輪寺

徳島市多家良町TEL0886-45-0008@